◆東京大学教授 西村幸夫先生◆

--------------------------
40カラットの見どころ

 劇団40カラットの身近なサポーターとして、またその舞台の永年の観客として、40カラットの芝居のユニークさとおもしろさを考えてみる。

 まず第一に、どの芝居にも共通していえることとして、スポットライトを浴びる特定のヒーロー・ヒロインとその他の配役という構造になっていないことがある。
つまり、どの役者もある種の事情とドラマをうちに秘めていて、それはそれだけでひとつの芝居の筋立てになり得るものが複数、重層的に切り結びながら、ストーリーが展開していくところに、他にはあまり見られない、40カラットの特長がある。どの役者に注目しても、ひとつの物語として芝居を見ることができる。したがって何度見ても新たな発見があるのだ。

 次に、芝居を見終わったあとの印象として、生きることに元気づけられるような作品が多いこと。役者もいきいきと楽しげに演じており、芝居のメッセージそのものも、いかに悲劇的なストーリーであっても、明日の元気につながるものなのだ。おそらく、劇団の基本的な主張として、生きる元気をまわりと分かちあうことがあるのだろう。

 第三に、役者と演出家の共同作業として芝居が作られていること。これは第二の点ともつながるが、それぞれの役者の工夫が織り込まれて、芝居としても幾重もの解釈が出来るものへと深まっていると思う。また、演出家帝国主義ではないそのような作劇術が、劇団としてのまとまりのよさを生んでいると思う。 



TOP